自然環境と人間を再接続する屋内デザインのこと
バイオフィリックという言葉は「生命・自然」と「愛好・趣味」から生まれた造語で、
人が本能的に自然との結びつきを求めているという考え方から生まれました。この考えに基づいて、自然や緑が豊かな環境を取り入れた室内デザインを「バイオフィリックデザイン」と呼びます。
バイオフィリックデザインは、自然環境との調和を重視したデザインの手法で、心理学者エドワード・O・ウィルソンによって提唱されました。この言葉は、ギリシャ語の「bios(生命)」と「philia(愛)」から来ており、
自然や生命への親しみや愛を意味します。
このデザインの手法は、建築やインテリアデザイン、ランドスケープデザインなど、多岐にわたって応用されています。
その目的は、自然の要素を日常生活や職場に取り入れ、心理的な快適さや健康、生産性の向上を促すことです。
具体的には、自然の色彩や自然光、植物、天然の素材などをデザインに盛り込みます。例えば、オフィスに植物を配置したり、自然光が入る窓を設けたり、天然素材の家具を使ったりすることが挙げられます。これらの要素は、安らぎや緊張解消、集中力向上などの効果があります。
バイオフィリックデザインは人間の本来的なニーズとつながりが深いものです。
私たちは長い進化の過程で自然と共存してきましたが、現代社会では自然から切り離されがちです。
このデザインは、人々が自然との関係を再構築し、健康で充実した生活を送るサポートをしています。
さらに、このデザインの効果は、多くの研究や実際の導入事例で確認されています。
自然の要素を取り入れたオフィスでは、ストレスレベルの低下や生産性の向上が報告されているほか、
教育や医療分野でも効果が認められています。
現代の持続可能性への取り組みの中で、バイオフィリックデザインは注目されています。

日本におけるバイオフィリックデザイン
日本においてバイオフィリックデザインの理解や実践は、一部で勘違いが生じているとの指摘があります。
バイオフィリックデザインは本来、自然と人間との本質的な関わり合いを重視するものであり、その深いつながりを探求するアプローチです。しかし、日本国内では、緑化や滝などに偏った装飾的な自然の解釈や実践が一部で見受けられます。
バイオフィリックデザインの真髄は、単に緑や自然の要素を取り入れるだけ(ライトネイチャー)ではありません。
それよりももっと深く、自然のパターンや素材、光や風の取り入れ方、生態系の再現など、本質的な自然要素へのアプローチ(ディープネイチャー)を含んでいます。
そのようにして、人々の健康や幸福感の向上と、持続可能な環境への貢献を目指しているものが、バイオフィリックデザインと呼ばれるデザイン手法です。
ライトネイチャー | ディープネイチャー |
---|---|
自然環境を楽しむことを重視する考え方です。 このアプローチは、自然と人工物が融合した場所での自然との触れ合いを楽しむことを目的としています。 具体的には、遊歩道やキャンプ場で楽しむことなどがこれに該当します。 | 自然との一体感を味わうことを重視する考え方です。 このアプローチは、自然との共生関係を重視し、自然に対する敬意を持つことを目的としています。 具体的には、原生林の中でのマインドフルネス実践やツリーハグなどがこれに該当します。 |
本来のバイオフィリックデザインとは
「本来のバイオフィリックデザイン」は、「ディープネイチャー」の考え方を基盤としています。
近年、バイオフィリックデザインは組織が持続可能性を重視するなかで注目されています。
次のセクションでは、具体的にESGの取り組みとバイオフィリックデザインの関連性について探求していきます





バイオフィリックデザインの導入が企業にもたらすメリット
バイオフィリックデザインの導入は、従業員のメンタルヘルス対策だけでなく、
地球環境に対する意識向上など現代社会が抱える様々な課題の解決に貢献する機会を生み出します。
バイオフィリックデザインは、自然環境との調和を重視したデザインの手法であり、
近年、多くの企業がこのアプローチを取り入れています。
このページでは、なぜ多くの企業がバイオフィリックデザインを導入するのかについて探求していきます。
特に、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みとの関連性に焦点を当てます。
ESGの取り組みとして
1.従業員の身体の健康状態を改善させる
2.メンタルヘルスとウェルビーイングを向上させる
3.職場の創造性と生産性を向上させる
4.円滑なコミュニケーションを生み出す
5.コミュニティへの帰属意識を醸成する
ESG(環境・社会・ガバナンス)における取り組みは、企業の持続可能性と社会的責任を示す重要な要素となっています。バイオフィリックデザインの導入は、これらのESG取り組みの一環として、多くの企業によって採用されています。
環境面において、バイオフィリックデザインは自然環境への配慮を示す重要な手段です。自然光や植物の配置、自然素材の使用などは、エネルギー効率や資源使用の最適化に寄与し、環境負荷を削減することが期待されます。このような環境に配慮した企業の姿勢は、ブランディングにも大きく寄与します。消費者やステークホルダーは、環境に配慮した企業を支持し、その企業の価値を高く評価する傾向があります。
社会的な面では、バイオフィリックデザインは従業員の働きやすさや幸福感の向上に寄与します。自然環境の要素が取り入れられた職場は、ストレスの軽減や創造性の刺激につながるとされています。従業員はより快適な環境で働くことができるため、離職率が低下し、人材の定着率が向上することが期待されます。また、バイオフィリックデザインの導入は、優秀な新入社員の確保にも役立ちます。若い世代の求職者は、働きやすい環境を重視し、企業の社会的責任に関心を持っています。バイオフィリックデザインを導入した企業は、その魅力的な職場環境により、優秀な新入社員を引きつけることができるでしょう。
ガバナンス面においても、バイオフィリックデザインの導入は透明性と倫理的な企業経営を示す一環として位置付けられます。企業が環境や従業員の健康に配慮し、持続可能な職場環境を提供する姿勢は、ステークホルダーや投資家からの信頼を高めることにつながります。これにより、企業のブランドイメージが向上し、競争力を強化することができます。
さらに、バイオフィリックデザインの導入は離職率の削減にも寄与します。快適で魅力的な職場環境は、従業員の満足度や働きやすさを高めるため、離職意欲を低下させる効果があります。従業員は自然の要素に囲まれた職場で働くことに喜びを感じ、長期的なキャリアの築き方を選ぶ傾向があります。
また、バイオフィリックデザインの導入は優秀な新入社員の確保にも貢献します。新たな人材を獲得する際には、企業のブランドイメージが重要な要素となります。環境や従業員の健康に配慮し、働きやすい環境を提供する企業は、人材市場での競争力が高まります。優秀な新入社員は、社会的責任を果たす企業に魅力を感じ、成長の機会や働きがいを求めて応募する可能性が高まります。
ESGの取り組みを通じて企業のブランディングを向上させ、離職率の削減や優秀な新入社員の確保にも寄与します。従業員の幸福感や働きやすさを重視する企業文化の構築には、バイオフィリックデザインの導入が有益な選択肢となることが示唆されます。
従業員の地球環境に対する意識向上の機会創出として
従業員の地球環境に対する意識向上の機会創出として、バイオフィリックデザインの導入は有効な手段となります。
自然環境への関心: バイオフィリックデザインにより自然の要素が取り入れられた職場環境では、従業員が自然に接する機会が増えます。この結果、従業員の自然環境への関心が高まり、地球環境に対する意識向上のきっかけとなるでしょう。
持続可能な価値観の醸成: バイオフィリックデザインは環境に配慮した設計や素材の使用を特徴としています。従業員がこのような環境で働くことで、持続可能な価値観が醸成される可能性があります。従業員は企業の取り組みに触れながら、地球環境への配慮が重要であるという意識を深めるでしょう。
社内コミュニケーションの促進: バイオフィリックデザインの導入は、従業員間や従業員と組織とのコミュニケーションを促進する効果があります。自然環境を共有することで、従業員同士が地球環境についての話題や関心事を共有しやすくなります。さらに、企業が環境に配慮した取り組みを積極的に情報発信することで、従業員の地球環境への意識向上の機会を創出できます。
イベントや教育プログラムの実施: バイオフィリックデザインの導入をきっかけに、地球環境に関連するイベントや教育プログラムを実施することも考えられます。例えば、環境保護活動への参加や持続可能なライフスタイルについてのワークショップなど、従業員の関心を引きつける様々なイベントや教育プログラムを通じて、地球環境に関する知識や意識を高める機会を提供することができます。従業員が自ら参加し、学び、行動することで、個人レベルから地球環境への意識と関与が深まります。
環境に配慮した行動の促進: バイオフィリックデザインの導入は、従業員に環境に配慮した行動を促すきっかけとなります。例えば、エネルギーの節約やリサイクルの推進、持続可能な交通手段の利用など、日常的な環境への配慮が自然な行動となることが期待されます。バイオフィリックデザインの環境への意識を育む環境が整っているため、従業員は積極的に環境に配慮した行動をとる傾向があります。
このように、バイオフィリックデザインの導入は、従業員の地球環境に対する意識向上の機会を創出する効果があります。自然との接触や環境に配慮した設計を通じて、従業員の持続可能な価値観や地球環境に対する関心が高まります。さらに、社内コミュニケーションの促進やイベント・教育プログラムの実施によって、従業員の地球環境への意識向上をサポートすることができます。
持続可能性への取り組み
SDGs、ESG、TCFD、TNFD、ISO31404、人的資本経営、健康経営。
共奏バイオフィリックデザインの果たす役割とは
- SDGsへの貢献: 共奏バイオフィリックデザインは、特にSDG3(健康と福祉)、SDG11(持続可能な都市とコミュニティ)、SDG15(陸上の生態系)に貢献します。
- ESGとの関連性: 環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の全てに関連し、自然環境の改善、従業員の幸福感や健康の向上、企業が持続可能な開発にどのように貢献しているかに影響を及ぼします。
- ISO 31404との一致: 共奏バイオフィリックデザインは、企業の持続可能な開発目標達成の取り組みの一部として評価される可能性があります。
- TCFD/TNFDへの間接的影響: 共奏バイオフィリックデザインにより企業の環境への配慮が示され、間接的にこれらの指標に影響を与えます。
- 人的資本経営と健康経営への貢献: 従業員の幸福感や健康の向上により、組織のパフォーマンスと生産性に対して明確な影響を及ぼします。共奏バイオフィリックデザインの目的が従業員の健康や幸福感の向上にあるため、健康経営に直接的に寄与します。

バイオフィリックデザイン導入の課題
バイオフィリックデザイン導入は
ゴールではなくスタートである
バイオフィリックデザイン導入は、終着点ではなく始まりに過ぎません。
導入後の適切な利用と共生が求められ、それが真の価値を創造します。
人々と自然の調和を深化させるプロセスが、このデザインの核心です。
誤解と複雑さ
よくある誤解は、
外構や屋内に植物や低木をたくさん植えたり、水辺をつくったり、木材を多用すれば
バイオフィリックデザインの効果を享受できると思われていることですが、
実際はそれよりもはるかに複雑なものです。
持続可能性の重要性
バイオフィリックデザインの持続可能な導入には、植物や自然素材の選定、エネルギー効率の考慮、水資源の適切な管理など、多岐にわたる要素が関与します。さらに、適切なメンテナンスやケアも欠かすことができません。
専門的な知識とスキルの必要性
バイオフィリックデザインの導入には専門的な知識やスキルが必要です。
設計段階から関係者との協力やコミュニケーションが重要であり、専門家やコンサルタントの助言を受けることが推奨されます。
費用対効果が見えにくい?
バイオフィリックデザインは、自然と人間のつながりを重視したデザイン手法で、適切な活用が鍵となります。このデザインは健康や幸福感の向上に寄与し、オフィスなどで効果が期待されていますが、専門的な知識や連携が重要です。費用対効果も大いに期待できるため、持続可能な未来への一歩として注目されています。
持続性・課題を克服するための取り組み
バイオフィリックデザインの課題に対処するためには、企業や組織は持続可能な設計と実装に取り組む必要があります。教育・トレーニングプログラムの提供や専門家のコンサルテーションを通じて、従業員の能力向上と持続可能なバイオフィリックデザインの実現に取り組むことが重要です。
バイオフィリックデザイン導入はスタートライン
真の本質を見極めよう
バイオフィリックデザインの導入は、ゴールではなく始まりです。
このデザイン手法の真の価値は導入後に発揮されるもので、ただ自然を模した美しいインテリアを
設置するだけではなく、その環境を利用する人々の意識と深く結びつくものです。
意義のあるバイオフィリックデザインには、
人々の心に響く、持続可能な未来への一歩を切り開く力があると言えるでしょう。
バイオフィリックデザインは、
単なるデザイン手法ではなく、育て上げるプロセスそのものであり、その喜びを共有することで真の価値が生まれます。
多くの人々が先進的なオフィスデザインのトレンドとしてこの手法を捉えることがあるかもしれません。
しかし、その本質は基本を正しく実践し、スタッフが楽しく働けるワークプレイスを創造することにあるのです。
この課題に取り組むのが共奏バイオフィリックデザインです。
真の本質を見極め、共に創り上げる喜びを体験しましょう。